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STUDIO TORIUMI

「絶対にボケない」方法は、存在しません。
ただし、およそ45%は動かせる範囲にあります。

最初に、いちばん大事なことを書きます。認知症を確実に防ぐ方法は、現時点でありません。 予防をうたう商品は多くありますが、確実性を約束できる根拠を持つものはひとつもない。 それでも、悲観する話ではありません。ランセット委員会(2024年)は、 世界の認知症症例のおよそ45%が、14の修正可能な要因と関連していると報告しています。 このサイトは、その動かせる部分だけを、効く順に扱います。

動かせる範囲 ≒ 45%
加齢・遺伝・未解明 ≒ 55%

動かせる範囲 ── 14の要因が関わる部分 加齢・遺伝・未解明 ── 年齢が最大の要因で、これは変えられない

前提なぜ「絶対」と書けないのか

ここを飛ばすと、この先の数字を読み違えます。3つだけ確認させてください。

1. 最大の危険因子は年齢で、それは動かせない

認知症の発症率は年齢とともに急に上がります。生活習慣がどれほど良くても、 長く生きればリスクは上がる。ここは誰にも変えられません。

遺伝も同じです。APOE ε4 という遺伝子型を持つ人はアルツハイマー病になりやすいことがわかっていますが、 持っていても発症しない人は多く、持っていなくても発症する人はいます。 確率が動くだけで、決定はされていません。

2. 「45%」はあなたの個人リスクではない

この45%は人口寄与割合(PAF)という統計です。 「社会全体からその要因が完全に消えたら、症例が理論上どれだけ減るか」を表します。

つまり「難聴を治せば自分のリスクが7%下がる」という意味ではありません。 個人にとっては「確率がいくらか下がる」以上のことは言えない。 この違いを曖昧にしたまま数字を出す記事や広告は、疑ってください。

3. 多くは「関連」であって、証明された「原因」ではない

14の要因の大半は、観察研究で見つかった関連です。 「運動しない人が認知症になりやすい」のか「認知症の初期だから動かなくなる」のか、 観察だけでは切り分けきれません(逆因果といいます)。

ただし、介入試験で効果が確かめられつつあるものもあります。 後半の「証拠の強さ別」で、どれがどの段階かを分けて書きました。 全部を同列に扱わないことが、このサイトの方針です。

要因14の修正可能な要因

数字は人口寄与割合の推計(ランセット委員会 2024)。大きいほど社会全体への影響が大きいという意味で、 個人の効果量ではありません。合計しておよそ45%になります。

若年期 〜45歳ごろ

5%

教育年数の少なさ

若いうちに作られた「認知予備能」が、後年の脳の変化を補いやすくすると考えられている

中年期 45〜65歳ごろ ── いちばん手が打てる時期

7%

難聴

単独では最大級。聞こえないことで会話が減り、脳への入力そのものが痩せていく

7%

LDLコレステロール高値

2024年に新しく加わった要因。血管性の障害を通じて効くと考えられている

3%

うつ

前駆症状である場合と、危険因子である場合の両方がある。どちらにせよ治療の対象

3%

頭部外傷

繰り返す打撲が特に問題。自転車のヘルメットと転倒予防が現実的な対策

2%

運動不足

数字は控えめだが、他の要因(血圧・糖尿・肥満・うつ)を同時に下げるので実効は大きい

2%

糖尿病

血糖の高い状態が続くと血管と神経の両方に効く

2%

喫煙

やめた時点からリスクは下がっていく。何歳でも遅くない

2%

高血圧(中年期)

中年期の管理が重要。高齢になってからでは効果が読みにくくなる

1%

肥満

単独より、血圧・血糖・脂質とセットで効いていると考えられる

1%

過度の飲酒

週21単位(日本酒換算で相当量)を超える飲酒。少量が良いという説は根拠が弱い

高年期 65歳ごろ〜

5%

社会的孤立

人と話す機会そのものが、脳にとっての負荷であり入力でもある

3%

大気汚染

個人で完全には避けられないが、住む場所と換気で多少は動かせる

2%

視力低下(未矯正)

2024年に追加。白内障の手術など、治療可能なものを放置しないこと

睡眠が入っていないのはなぜか

睡眠不足や睡眠時無呼吸と認知症の関連を示す研究は多くありますが、 ランセット委員会の14要因には現時点で含まれていません。 因果の向きが定めきれていない(初期の変化が睡眠を乱す可能性がある)ためです。

とはいえ睡眠時無呼吸は治療対象ですし、睡眠の改善は上の要因のうち うつ・肥満・血圧に効きます。やる価値はありますが、「14に入っている」とは書けません。 このサイトは、そこを混ぜないことにしています。

診断いま手をつけられるもの

年齢を合わせて、当てはまるものにチェックしてください。 リスクの点数は出しません。それは医師の仕事で、しかも個人には計算できないからです。 出るのは「あなたが今、動かせる項目」を影響の大きい順に並べたものです。 入力はこの画面から出ません。

チェック 0 / 14
35 歳
チェックを入れると、優先順位が出ます。

〜45歳いま仕込む

45〜65歳いちばん効く

65歳〜維持する

色がついているのが、いまのあなたの年齢帯にあたる要因です。ただし、早く始めて損なものは一つもありません。

重点見落とされがちで、いちばん効く3つ

「運動と食事」は誰でも知っています。ここでは、上位なのに話題になりにくいものを挙げます。

難聴 PAF 7% ── 単独で最大級

認知症の話で補聴器が出てくることは、ほとんどありません。しかし14要因のうち最大級です。 聞こえが悪いと会話が減り、外出が減り、社会的孤立(5%)まで連鎖します。

2023年の ACHIEVE試験では、補聴器の使用が高齢者全体の認知機能低下を有意には遅らせなかった一方、 もともとリスクの高い集団では約48%低下を抑えたと報告されました。 全員に効くとは言えませんが、介入試験で効果が見えた数少ない対策です。

いますること テレビの音量が家族と合わない、聞き返しが増えた、騒がしい店で会話が難しい—— どれかが当てはまるなら耳鼻咽喉科で聴力検査を。数千円で終わります。 通販の「集音器」は補聴器とは別物なので、まず検査を。

LDLコレステロールと血圧 PAF 7% + 2%

LDLは2024年に新しく14要因へ加わった項目です。血圧とあわせて、 中年期の管理が効くという点で共通しています。高齢になってから下げても、効果は読みにくくなる。

血圧については SPRINT MIND試験で、厳格な降圧が 軽度認知障害の発症を減らしたと報告されています(認知症そのものへの効果は統計的に確定しませんでした)。 ここも、介入試験のある数少ない領域です。

いますること 健診の数値を捨てずに記録する。家庭用血圧計を1台持ち、朝の同じ時間に測る。 「高いと言われたが放置している」が最も多い失敗です。

社会的つながり PAF 5% ── 一人で作れないもの

他の要因はほぼ一人で対処できますが、これだけは違います。しかも退職した瞬間に急落する。 仕事を通じた関係しか持っていない人ほど、あとで効いてきます。

「友達を作る」は目標として大きすぎます。週に一度、決まった時間に人と会う予定がある状態を作れば十分です。 趣味の集まり、地域の活動、通いの店、なんでもいい。継続する枠があるかどうかが要点です。

いますること いまの生活で、仕事と家族を除いた人間関係をいくつ挙げられるか数える。 ゼロなら、それが最優先の課題です。若いうちに作るほうが、あとから作るより圧倒的に楽です。

証拠強さで分けると、こうなります

同じ「予防に良い」でも、根拠の段階はまるで違います。ここを分けずに並べる記事が多いので、分けました。

介入試験あり
難聴の補正(補聴器)

ACHIEVE試験。高リスク集団で認知機能低下の抑制が見られた。全体では有意差なし、という限界も含めて評価すべき。

介入試験あり
血圧の管理

SPRINT MIND試験で軽度認知障害の減少。認知症そのものへの効果は確定していない。

介入試験あり
複数要因への同時介入

フィンランドのFINGER試験。運動・食事・認知訓練・血管リスク管理をまとめて2年行い、認知機能に小さいが有意な改善。「一つだけ」より「まとめて」のほうが筋が良いという根拠。

観察研究で一貫
運動

関連は非常に一貫している。ただし逆因果(初期症状で動かなくなる)を完全には排除できていない。それでも、やらない理由はない。他の要因にも同時に効く。

観察研究で一貫
社会的つながり・教育・知的活動

認知予備能の仮説を支持する結果が多い。介入で作れるかは、まだ検証途上。

観察研究で一貫
禁煙・糖尿病管理・適正体重

心血管疾患の予防としては確立している。認知症への効果はその延長として妥当と考えられている。

有望だが未確定
地中海食・MIND食

観察研究では良好。ただし2023年の無作為化試験(MIND食 vs 対照)では、3年間で両群に差が出なかった。期待しすぎないこと。

有望だが未確定
睡眠の改善・睡眠時無呼吸の治療

関連は多数報告。因果の向きが未確定のため14要因には入っていない。健康上の理由だけでも治療する価値はある。

効果は限定的
脳トレゲーム・パズル

練習した課題は上手くなるが、日常の認知機能や認知症の発症に移るかは疑わしいというのが現在の見方。楽しいならやればいいが、対策の中心には置かないこと。

根拠なし
認知症を予防するサプリメント

予防効果が確認されたサプリメントは、現時点でひとつもありません。 イチョウ葉エキスは大規模試験(GEM試験)で効果が示されず、ビタミンE・オメガ3も予防効果は確認されていない。 このサイトがサプリメントのリンクを一切置かないのは、これが理由です。

根拠なし
「これで治る」と書かれた食品・器具

ココナッツオイル、特定の水、特殊な電気刺激器具など。認知症は不安が大きく、確認が難しいため、この種の商品が集まりやすい領域です。断定的な表現を見たら、まず疑ってください。

早期気づいたときにすること

予防と同じくらい大事なのが、早く見つけることです。 軽度認知障害(MCI)の段階なら、一部は正常に戻ります。 薬の効き方も、早い段階のほうが違います。

1. 受診を考える目安

「もの忘れ」は年齢でも起きます。分けるとすれば、こういう違いです。

  • 加齢によるもの:体験の一部を忘れる。ヒントで思い出せる。自覚がある
  • 要注意:体験そのものが抜ける。ヒントでも戻らない。本人より周囲が先に気づく
  • 同じ話を短時間に繰り返す/段取りが要る作業(料理・金銭管理)が急に苦手になる
  • 今までできていた家電やアプリの操作が、急にわからなくなる
2. どこへ行くか

いきなり専門病院でなくて構いません。

  • まずかかりつけ医。必要なら紹介してもらえる
  • 本人が受診を嫌がる場合は、地域包括支援センターへ家族だけで相談できる。市区町村の窓口で場所を教えてもらえます
  • 詳しい検査が要るときは認知症疾患医療センター(各都道府県が指定)
  • 甲状腺の病気やビタミン欠乏、薬の副作用など、治療で改善する原因のことがあります。検査する意味はここにもあります
3. 薬について(予防薬ではありません)

レカネマブなど、アルツハイマー病の原因物質に働きかける薬が使えるようになりました。 ただし進行を遅らせる薬であって、治す薬でも、予防する薬でもありません。 対象は早期に限られ、脳のむくみや微小出血といった副作用があり、定期的な画像検査が要ります。 期待と限界の両方を、主治医と確認してください。

不安が強いときに、いちばん危ないこと

この領域は、不安につけ込む商品と情報がとても多い場所です。 「絶対」「必ず」「これだけで」という言葉が出てきたら、それだけで根拠を疑う理由になります。

本当に効くとわかっていることは、地味です。聞こえを確かめる。血圧を測る。歩く。人と会う。 派手さはありませんが、いま現在いちばん確かな手です。

道具手順に対応する買い物

上に書いたことを実行するための道具だけです。サプリメントは載せません。 効くと確認されたものが、ひとつもないからです。

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このサイトについて

医療行為の案内ではありません。診断・治療については必ず医師にご相談ください。 ここに書いた数字は公開されている研究報告にもとづく概算で、個人の発症確率を示すものではありません

研究は更新されます。数年後には要因の数も重みも変わっているはずです。 そのときは、このページのほうを書き換えます。

主な出典 ── Livingston et al., Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission, The Lancet, 2024 / Lin et al., ACHIEVE trial, The Lancet, 2023 / SPRINT MIND Investigators, JAMA, 2019 / Ngandu et al., FINGER trial, The Lancet, 2015 / DeKosky et al., GEM study, JAMA, 2008